【ムシューリックを栽培する】

長年の経験からムシューリックは、沖縄、南九州、北海道を除く日本全国で栽培ができます。気候風土や標高によって9月下旬から10月中旬を目途に球根を植えます。2週間ほどで発芽し、年末までに25cmほどに成長します。無農薬で栽培していますので、播種をしてしまえば除草以外に作業はありません。秋口に1回、春先に1回、収穫前に1回と最低3回程度、専用の草刈り機あるいは管理機で畝の間の雑草を処理します。

ムシューリックには、芽が出始めた10月から翌年の5月まで天敵がいます。10月、畑に降り立ったカラスの群れはムシューリックの苗を次々と抜きます。食べるわけでもなく、抜かれた苗は数十センチ離れた場所に置き去りにされていて、まさにそれはカラスにとって遊びのようです。寒さが厳しくなる12月頃から猿の食害が始まります。時折の積雪に食料を失った猿の集団は、競ってムシューリックの柔らかな芽を食べに来ます。表面をバリカンで刈ったようにきれいに食べ、それがまた少しでも伸びた頃にまた訪れます。30~40頭の群れは3月までに数回にわたって周辺のムシューリック畑を襲うため、ロケット花火や爆竹などを使って追いやりますがあまり効果は無いようです。ムシューリックの畑には堆肥がたっぷり散布されています。そこには無数のミミズが繁殖しますが、これを狙ってモグラのトンネルが縦横無尽に掘られます。この穴を無断使用してネズミが侵入し、ムシューリックの甘くて美味しい球根を食べます。マルチを張った畑は冬も直接寒気を感じることがなく、ムシューリックの球根はまさに大好物といったところでしょう。この食害は1列100メートルの畝の半分がなくなってしまうほどに拡大する場合があります。当然のことながら、ムシューリックの畑にはネズミの駆除剤を散布することができませんので、コツコツと1匹ずつ専用のネズミ捕りで捕獲をします。年間で200匹を超えることなど稀ではありません。

3月中旬から5月上旬にかけてムシューリックは急激に成長します。平均で60cm程度に大きくなり、やがて中心部分から花芽が出てきます。30~40cmに成長した頃を見計らって切り取ります。花芽の切り取り作業は球根を肥大させるための一環として行なわれていましたが、近年、市場の要望もあって一部が生鮮野菜として流通するようになりました。この花芽は流通する量が限られているために一般的ではありませんが、生食やおひたし、炒め物、てんぷらなど様々な料理法によって美味しいと評判になっています。

ムシューリックの球根は花芽を切り取ってから概ね35日目が球根の収穫日に目標設定されています。ちょうど梅雨の最盛期になっているために、気象状況をにらみながら効率よく収穫作業を行ないます。例年7月半ばにはすべての収穫が終了します。

ムシューリックの栽培から皮むき、洗浄、箱詰めまでの作業には、地元の100名にも及ぶ高齢者を中心にした人々によって行なわれます。朝早くから夕方まで、個々の健康や体力に合わせて時間を選択し、またコミニュケーションの場として毎年楽しみにされている方もおられます。畑での収穫作業では、畑の一角にシートなどを広げてお弁当を食べたりする光景は、まさに小さな子供たちの遠足のようでした。